自然のダイナミズムを感じる
ヨーロッパなど世界で愛されるジビエ食
ジビエとは、フランス語で「狩猟して捕獲した野生鳥獣」のこと。
古代ギリシア・ローマ時代から、ヨーロッパにおいて狩猟とは、特権階級や貴族、地主に許された「特別な娯楽」としての色合いが強くありました。彼らは大自然の広大な領地で狩りを楽しみ、お抱えの料理人に腕を振るわせて舌鼓を打っていたのです。現在でも、フランスの市場には雉や鹿、猪などが並び、家庭料理としても親しまれています。
近代の日本では、仏教の影響や江戸時代の肉食禁止令の影響で、本格的に獣の肉を楽しむようになったのは、明治時代以降です。
しかし、その美味しさから、江戸では「薬」という名目で食べられていたという記録が残っています(薬食い)。猪肉を「山くじら」や「牡丹」、鹿肉を「もみじ」と呼ぶのは当時の名残です。また、美食家・北大路魯山人をしても、「猪は、すべての肉の中で最高に美味」と言わせる魅力があったようです。東北を中心としたマタギ文化でも、熊や猪を食用として捕獲しており、ジビエ食は国内でも人々の心をとらえてきたことが伺えます。
その一匙(ひとさじ)から広がる、土地や季節のストーリー
自然のままに生きてきた野生鳥獣は、食べる餌も地域によって大きく違います。雪深い地域や温暖な地域など、気候の影響も受けるので、その肉の味や脂肪のつき方には、「地域の特色」が大きく現れます。
その土地をまるごと食する。そんな個性こそがジビエの味わいであり、魅力であるとも言えます。捕獲の方法についても猟師のこだわりやポリシーが見え隠れしたり、解体調理についても職人の心遣いを感じたりすることもあります。
知れば知るほど、ひとくちの肉から深いストーリーが見えてきて、普段の何倍もの喜びを感じることができます。また、捕獲方法から知ることで、コンビニエンスストアやスーパーマーケットでの入手とは違った「命をいただく」という実感も味わうことができるのです。
さらに、調理の楽しみも。ジビエには、「生前にその獣が食べていたものを付け合わせにすると、美味しさが増す」という考え方があります。
例えばこのDAISHINのある瀬戸内海の大三島のように、柑橘が多い土地で暮らしていた猪には、蜜柑のソースを組み合わせてみると肉のフルーティーさが引き立つことでしょう。 ジビエの調理にはコツも必要ですが、初心者は煮込み料理から、チャレンジしたい人は低温調理など、初心者上級者問わずさまざまな料理が楽しめることも魅力のひとつです。
もっとジビエのことを知りたい!